NOVEL

年収一億超えの妻たち vol.2~虚しさの正体~

一通りの美術鑑賞を終え、奇妙な思いを胸に懐きながらも私はタクシーを呼び帰路に着く。

心に抱えたモヤモヤが晴れたわけではないが不意に、帰りたいとの思いが心に湧き上がったのも事実だ。

 

その後、私は自宅へと帰宅する。

 

「奥様、お帰りなさいませ」

帰宅すると早苗さんが笑顔で出迎えてくれた。

「ただいま、早苗さん。いい気晴らしになったわ」

「それは何よりです」

 

私は早苗さんと挨拶を交わし、聡也の様子を見に向かった。

 

(良かった…ぐっすりと眠ってる)

 

少し気がかりではあったが、聡也は何事もなかったかのようにスヤスヤと眠っていた。

 

だが…。

 

その最中、玄関のドアが開く音を耳にする。

 

(え、誰だろう?)

 

その後、玄関に様子を見に行くと、そこには役員の食事会で遅くなるはずの翔平が立っていた。

 

(どうして帰ってきてるの?)

 

有り得ないはずの光景を目にし、私は一瞬、動揺する。

 

しかし、呆然と立ち尽くしていると、彼はやや視線を逸らしつつ私に向けて言った。

「あ~、今日は思ったより早く食事会の方が終わってな…。それに今日は結婚念日だからな」

 

(覚えていてくれたんだ…)

 

そんな思いがけない言葉を聞き、胸が熱くなった。

激しい鼓動と熱い想い。

 

そして、言葉を発するよりも先に私は、彼と熱い口づけを交わした。

 

Next:3月31日

結婚記念日当日の夜、夫・翔平と充実した時間を過ごすも、その後の美佳に訪れたのはいつもの日々。そんな美佳の様子を見て家政婦の早苗がある提案をする。