NOVEL

女の顔に化粧をするとvol.3 ~万難を排して~

加奈恵はタイアップ企画が中止になったことに納得がいかず、相手企業の米田とプロデューサー清水と再度話し合いの場を設けた。

その話し合いの結末とは?

 


前回▶女の顔に化粧をするとvol.2 ~暗礁~

はじめから読む▶女の顔に化粧をするとvol.1 ~思いがけない知らせ~

 

 

「お世話になっております。楽趣味の真鍋です。米田様、いらっしゃいますでしょうか」

「はい。少々お待ちください」

 

午前中の米田の時間はなんとなく把握している。朝の時間であれば、恐らく繋がるはずだ。受話器から流れる定番の待機音を聞きながら、手持ち無沙汰に待つ。すると曲が途中で途切れ、人の気配が現れた。

 

「はい。米田です」

「おはようございます。真鍋です」

「あぁ。おはようございます」

まだ少し朝のけだるさが残っている声で米田が電話に出た。昨日の今日だ。話の内容はなんとなく察しがついているのだろう。

 

「昨日のお話についてなのですが」

 

事務的な口調で淡々と話を進める。相手が知った中であろうと一つの企業の取引が躓いているだけだ。他の企業と同じように、上席を出し、論理的に進めればタイアップの話がなくなることはないはずだ。

 

「そのことについては昨日お話したはずだよ」

「それは分かっています。ただ、弊社としても時間をかけて準備していたものがあります」

「だから、私では何もできないんだって…」

「明日、御社に伺います」

 

少しの間が流れる。私のスケジュールも相手のスケジュールも全て考えずに吹っ掛けた条件だ。無理もない。

 

「明日はちょっと厳しいかな」

「では、来週のご都合の良いタイミングを教えてください」