NOVEL

運命の輪 vol.4~偶然は必然~

「天の川みたいでしょう」

「!!」

反射的に振り返ると、目の前にトレイを手にしたピエールが立っている。

 

「驚かせちゃった?ごめんなさい」

「いえ、大丈夫です」

大きく脈打った鼓動はまだ収まらない。言いようのない不安が胸に広がっている。

けれど顔に出ることはない。

紗希のいつもの癖だった。

どこか緊張した空気をかき消す様にピエールが話しかける。

「お待たせ。簡単なものでごめんなさいね」

ピエールはカナッペとテリーヌ、サラダ、フルーツを乗せたお皿をテーブルに置いた。

ワイングラスに買ってきたワインを開けて白ワインを注ぎ入れる。

Louis Latour Montrachet Grand Cru ルイ ラトゥール モンラッシェ。

フランスの香りが夜空に溶け出していく。

 

「はい、どうぞ」

差し出されたグラスを紗希は手に取った。

「乾杯」

「・・何に?」

「星空に」

意味深にピエールが微笑む。

 

その笑顔に紗希は何かを思い出しそうになる。

あれは、いつのことだっただろう。

 

水風船が弾ける様に記憶の扉が開く。

ピエールの瞳に青い炎が揺らいだのを紗希は見過ごさなかった。

 

「・・香那?」

忘れかけていた名前が記憶の海から浮かび上がってきた。

懐かしさと、胸の痛みを伴って・・。

 

 

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紗希が遠い記憶を思い返していると、ピエールの仕事仲間数人が彼の自宅に入って来た。そして紗希はその中のある男性と仲良くなる。