NOVEL

運命の輪 vol.4~偶然は必然~

白い扉を進むと、マーブル模様のフロアが続く。

間接照明が廊下を照らしている先へと案内される。

広々としたリビングには白いグランドピアノ。ゆったりと10数名は座ることができるソファが並べられている。

 

全面ガラスの向こうはルーフテラスになっているようだ。

48階のルーフテラスはなかなかのものよ」

ピエールがテラスに続く扉を開きながら言う。

うまく風を避ける設計になっているらしく、星に近い空間は思ったより穏やかだ。

 

10畳ほどの広さがあるテラスにはテーブルと椅子がセットされている。

そのテーブルの上にピエールは買って来たワインを置いた。

「ちょっと待ってて、グラスと何かつまむものを持ってくるから」

「あ、お手伝いします」

「大丈夫。お客様はじっとしていて」

軽くウインクしてピエールがリビングへと姿を消した。

 

一人残された紗希は空を見上げて深呼吸する。同じマンションとは思えない景色をもっとよく見ようと手すりへ近付いた。

下を見降ろすと車のライトが蛍のように見える。

「・・吸い込まれそう・」

赤や白、オレンジの光が行く先を見失った星のように瞬いている。

(まるで水の中・・)

ふと、そんなことを思った瞬間例えようのない不安と息苦しさに襲われる。周囲の空気がすべて水に変わったかに思える。

(溺れる!)

そう思った瞬間、後ろで声がした。