NOVEL

悪女 ~ Movement of the mouth ~ vol.6

 

少し崩した表情も綺麗だ。

 

「なんで、アナウンサー辞めたんですか?」

「んん…経済系を担当していたのですが…そっちの道に興味が湧いたっていうのかなぁ」

 

それなり。当たり障りのない返しの羅列。まだ、莉子は昭人のペースに合わせていくようにしか会話を展開させない。

 小枝子が、少しだけ怪訝そうに「莉子ってそんな質問魔だった?」と、会話を遮断する。

 

「だって、起業セミナーでしょ?気になるもの。私だって個人事業主だし…」

 

あくまでも仕事関連での興味であるアピールをしつつ、視線は昭人の口元の変化を見逃さない。

 

ワイングラスに口をつけた後、薄い唇を舌で少し舐める仕草が目に入る。

うつむいているが、上目使いで莉子をロックオンしている。

そして、チラッと視線があうと、左の口元が上がる。

 

 

―きた!!!-

 

 

頭の回転が速い男は良い。まだ、顔を合わせて一時間位。会話は数回。

それでも、莉子はこの男をもっと知りたい、強いては欲しいと思った。

 

子宮が揺れるのを感じる。

 

これを、恋というのかもしれない。

漠然とだが、莉子は核心を導き出したのだった。

 

 

―有難う。小枝子…私が貰うよ。-

 

 

Next:2月21日更新予定

 恋はするものではなく、落ちるもの。今まで感じたことのない感覚に揺れる莉子。仕掛けたのは、莉子か昭人か?不透明なシーソーゲームが動き出す!