NOVEL

悪女 ~ Movement of the mouth ~ vol.7

恋はするものではなく、落ちるもの。今まで感じたことのない感覚に揺れる莉子。

仕掛けたのは、莉子か昭人か?不透明なシーソーゲームが動き出す!

 


前回:悪女 ~ Movement of the mouth ~ vol.6

 

 

莉子はノート型PC画面を眺めていた。

『遊川昭人のオンライン講座』

濃いパープルにラインストーンを散りばめたネイルが、コトコトとさっきから長い時間テーブルを鳴らしていた。


小枝子の家で開かれたホームパーティーから数日経った。

あの日は、小枝子のオンステージで昭人とはろくに話せなかったし、彼は『女子会を楽しんで』と深夜の1時には自室に帰っていった。

 

小枝子からの情報だけでは、何も解らない。

夫婦関係ではあるけれど、彼とは互いの利点が合っただけ。

「興味がわく男が居れば、普通に寝るし…。お互いにそういう事を干渉し合わない関係。」

とりあえず…行っとく?が合言葉のような小枝子なら、そうだろう。

自由に使えるお金と男を手に入れたと言う割には、見せつけるようなボディタッチは何だったのか?

 

『ダサい、女の虚勢』

 

自分は男に溺れない、モテる女を演出したがる典型。

 

でも、その程度の女に引っかかる男には見えなかった。

オンラインサロンのサンプル動画を何度チェックしても、理想的な口元に、人の心を掴んで離さないタイミングを計った口調。

優しく微笑む外面さえも、その奥に何を隠しているのか?と、興味をそそる。

 

彼が莉子に見せた表情は『征服感』だった。

小枝子が得られる利点。でも、彼は小枝子にどんな利点を求めたのか?

 

「一方通行…な供給にしかみえないけど?」

莉子はサイトの予約フォームに、実名で個人サロンの予約の申し込みを入力した。

すぐに、申し込み完了のDMが返ってきた。

サロン参加は一週間後だった。

 

その日の夜だった。

登録されていない携帯番号が表示されている。

070…という事は、最近新たに取った番号だろう。

 

―誰?-

プライベートと仕事は完全に分けている莉子のプライベート電話に、知らない番号から電話がかかってくることはない。

 

莉子は留守電になるまで待ち、電話の録音を聞くと…

「もしもし…」

この声は!?