NOVEL

「Lady, Bloody Mary」~女の嫉妬~ vol.10

聖奈と蒼が選んだ道、迷走するリノはどこへ行く?

そして紗夜と坂間の運命は?

遂に「女王の座(ブラッディー・メアリー)」に着く一人が決定する!?

 


前回:「Lady, Bloody Mary」~女の嫉妬~ vol.9

 

 

「君は...」

 

真夜中の名古屋の長距離バスターミナル。聖奈は仕事帰りに通りすがると、待合室の喫煙室に見知った顔がいた。よっと彼は片手を上げ、タバコを灰皿に放り入れるとこちらへ出てきた。シルバーの大きなスーツケースを共にして。

 

「アオくん?どうしたの?旅行?」

「今日、俺に会えるなんて運命じゃない、聖奈ちゃん」

「ちゃんはやめてよ、歳変わらないじゃない、なめられてるみたい」

 

ぷんと不機嫌に憎まれ口を叩く、でもその様子をみてけらけら笑う蒼。

 

「じゃ聖奈さん、俺、しばらく此処離れることにしたの」

 

よいしょとDIESELのリュックを背負い直す。

 

「だからお別れだね」

「え、どこか行くの?」

「東京にあるとある物件を見にね」

「え?東京?なんで?またバーでもするの?」

 

はははっ!そりゃこの見た目だもんね、と蒼は大きく笑った。

そして胸元から何かを取り出す。それは医師免許と黒髪短髪で映っている彼の姿だった。

 

「は?これ、本人?」

 

”殿村蒼”と書かれた名前を三度見した聖奈。

 

「ちゃんと本物、俺、医者の卵」

「え、なんで?え??え?!」

 

聖奈はまるで訳が分からない、とりあえず落ち着いてと蒼はひとしきり彼女の様子を腹を抱えて笑った後、こう言った。

 

「嘘みたいなほんとみたいな話、聞いてみる?」

 

そこから粗末なベンチに二人で座りながら、彼からの話を聞いた。