NOVEL

「Lady, Bloody Mary」~女の嫉妬~ vol.10

 

『そう、喧嘩は本気でしないと意味ないじゃない。喧嘩で得られるものって、意外と普通じゃ手に入らないものなのよ。そう3人の女性は、玉座に座りながら静かに笑った。END』

 

私はそうパソコンに打ち終わると、静かにうーんと大きな背伸びをした。

ブラッディーメアリー、真っ赤なカクテルを中心に描かれる年代の違うキャリア女性達の、仕事と恋を巡るバトル。私はそれを静かに見つめている透明な一人だった。

 

「相変わらずリノさん、こっわ。めちゃ睨んでるじゃん」

「聖奈ちゃん、不機嫌な顔してるぅ」

「紗夜さんってさ、本命の他に彼氏っているの?前、名鉄の駅で一緒にいるの見たよー」

 

モブキャラの私たちの会話は終わらない、何しろ歩く噂話みたいな人たちだったから。

私が描いてきた「女の嫉妬」という、物語。しかし、あくまで創作物という小説と、現実は少し違っていた。実際のCKNではあっさりと結末が用意されていた。現実と妄想が剥離するほど、私はほくそ笑む。

 

まずオペレーション部の安武聖奈、彼女が熱を上げていたのが実はホストクラブであった。会社では実際あざとい系女子ではあったが、その精神的なストレスから、栄の繁華街へ夜は繰り出す様になり、好きなホストができ大金を貢ぐ様になる。

昼職だけでは間に合わなくなり、夜の仕事も勝手に始めたが、遂に会社にまでホストクラブの売掛の督促が来る様になりあっさり退職。

現在は栄のキャバクラで働いているらしいがホストクラブに行っているかは不明。

 

そして研究開発室の三宮リノ、強烈お局キャラとして研究開発部に君臨している。女王の座を競い合ったあと、負けを認め颯爽と去っていくのが小説の最後であった。

しかし、本当は会社にそのまま居続け現在もお局キャラは健在のまま「裸の女王様」として部署にしがみついているらしく来年の人事では彼女の居場所を残すのはかなり難しいと噂されている。

ちなみに海老原とは時折、会っているらしい。