NOVEL

「Lady, Bloody Mary」~女の嫉妬~ vol.9

ワンナイトで見知らぬ男に抱かれた紗夜、だがその後、妊娠の疑いが。

望むもの全てを手に入れたはずなのに、一気に谷底に落とされる。

そして荒れるリノ、聖奈はアオを意識し始め、アオは自らの道を進もうとしていた。

 


前回:「Lady, Bloody Mary」~女の嫉妬~ vol.8

 

 

「あれ?小竹さんは?」

 

プロジェクトメンバーたちが拍手する中、主役がいないことに気づいた社員たちが声を上げた。坂間が探してきますとオフィスを出る。

すると、女子トイレから真っ青な顔で出てきた紗夜を見つけた坂間は駆け寄る。

それを柱の影から、恨めしそうに見つめるリノ。

 

「小竹さん、ここにいたの?...えっ?凄い顔色だ、とりあえず医務室へ」

 

さすがに紗夜の様子に気づいた坂間は抱えるように、無言の紗夜を連れていく。

デスクに戻った聖奈は、はーとため息をつく。

 

「せーなちゃん、しょうがないよ。今回は小竹先輩とリノさんだもん。強すぎだよ」

 

プロモーション部の同期が励ましにきてくれ、ありがとーと泣き真似をしながら応える。しかしあの夜、栄の華やかな街をアオと仲良さげに歩いていた我が物顔のリノの姿が目にこびりついている。

会社で皆から何も言われない「裸の王様」のお局女子社員が、ホストをヒモにしてるなんて広げたら一大スキャンダルだ。

面白すぎるし、これでリノを窮地に陥れることもできるが、なぜかそういう気にはならなかった。

 

今、遠くで明らかに悔しがっているリノ本人よりもあのアオという青年の方が気になってしまったから。

 

 

そうして三者三様の歯車は、互いに違う方向へまわりはじめていく。

それを私はじっと遠くで見つめるだけ。

本当はどうなるか知っているくせに、私は透明な存在として居続けるしかできないのだ。

 

 

「さ、横になって」

 

医務室で呆然とした顔で横になる紗夜、傍らには坂間が座る。

 

「小竹さん、病院に行った方がいい?」

「いや、大丈夫...ごめん」