NOVEL

運命の輪 vol.3~時を告げる鐘~

「じゃあ、行きましょう」

先に席を立った由衣についてカバンを持ち上げる。

キャッシャーで精算を済ませて、二人は店を後にした。

 

  • 回り出す“運命の輪”

 

午後6

 

栄駅までは自由ヶ丘から地下鉄で30分もかからない。

休日でも街へ向かう人の流れは少なくない。

駅の東側のビルの中に美容室はあった。

 

“La Roue de Fortune”

白い扉に彫り込まれた文字。

“ルー・デ・フォルテューヌ”フランス語で“運命の輪”を意味する店名。

 

「変わった名前のお店ね」

「そうでしょ。店長もちょっと変わっているの」

由衣がいたずらっ子のように軽くウインクしてチャイムを鳴らす。

 

小鳥が鳴くような軽やかなチャイムの音色が響くと扉が開いた。

 

「いらっしゃい、時間ぴったりね」

出迎えてくれたのは短い銀髪の少し、メイクをしているようにも見える男性。

白いシャツにピタリとした革のボトム。

明らかにふつうの人とは一線を画す雰囲気を纏っている。

 

足元は特徴的なデザイン。

ハリネズミのような突起のついた独特のスニーカーは一目であるブランドだと分かる。

モデルのような歩き方で近づいてくると由衣と軽いハグをする。

 

「また痩せたんじゃなぁい?だめよ、女の子はお肉がなくちゃ」

「変わってないわ、1カ月前と」

クスクスと由衣が笑いながらバッグを傍のスタッフに手渡す。

 

脇に控えていた男性スタッフが由衣のバッグを受け取り、大理石の台に置く。

 

「ピエールよ。こちら、紗希ちゃん」

由衣が紗希の手を引きながら紹介する。

「こう見えてパリコレにも呼ばれるカリスマ、だっけ?」

(たわ)けたように舌を出す由衣を軽く睨み付けるようにしながらピエールが紗希の方へ歩み寄った。