NOVEL

女の顔に化粧をするとvol.7 ~忠告~

 

お昼休憩が終わりオフィスに戻ると、島田はちょうど商談で外に出ていた。パソコンを付け、メール画面を開く。重要な営業メールを送るときよりも、文面を考えるのに時間を要した。しばらく考えて決めた文面は、シンプルなものだった。

 

―島田さん。お疲れ様です。真鍋です。お話があります。本日オフィスに戻る予定がなければ明日でも構いませんので、お手すきのときに声をかけてください。

 

文章をいたずらに冗長しても仕方がないように思えた。シンプルに伝えたいことをまっすぐに伝えなければいけないように思えた。

考えてみると、私は業務上必要なコミュニケーション以上の接触してこなかった。

だから、私は課のメンバーである島田のことを、実はよく知らない。食べ物の好み、好きな歌、将来の夢。島田を形作る要素を、私は知らないのだ。明るい性格と私を頼ってくる姿勢から、島田が課長である私をどう思っているかなど考えたことがなかった。一度、真正面から、話を聞いてみる必要があるように感じた。

 

P.S

もう一つ伝えることがあった。わざわざ文面にしたのは初めてかもしれない。

 

―資料確認しました。前回の資料よりも細かく予算組や売り上げの予想が組まれています。この案で、次の会議に向かいましょう。

 

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翌日、部下の島田と面談をすることになった真鍋加奈恵。話を進めていくうちに真鍋は島田の予想外の反応にたじろいでしまう。