NOVEL

女の顔に化粧をするとvol.7 ~忠告~

山下課長と珍しく昼食を取ることになった真鍋加奈恵だが、山下からある衝撃的な報告を受けることとなる。

その内容とは…!?


前回▶女の顔に化粧をするとvol.6 ~憂鬱~

はじめから読む▶女の顔に化粧をするとvol.1 ~思いがけない知らせ~

 

 

845分。全体朝礼開始。

「現在の進捗に関して報告します」

 

いつも通りの朝礼。結局、私はもとの日常に戻ってきてしまった。勇気がなかったのだろうか。未練があるほど、魅力的なものや距離感の近いものなんて、私にはない。

 

「課長!この資料、最終チェックお願いします!」

 

いつもの明るさで島田が資料を渡してきた。満面の笑みを浮かべて。この笑顔の裏で、何を考えているのだろう。この子は、どういう子なんだろう。少なくとも雅が、心から一緒にいて楽しいと思えるのは、この島田なのだろう。

 

「わかったわ。おいておいて」

「ありがとうございます!」

 

渡された資料をペラペラと捲る。化粧品を自分でカスタマイズして、オリジナルの化粧品をつくることが出来る商品企画。なるべくコストを抑えた素材を揃えつつ、コスト内で最高の品質を保つ。企画としてはよくまとまっているものだった。しかし、今の私にはこれをじっくりと直視することはできなかった。

 

「今日明日中に添削して渡すわね」

 

受け取った資料をデスクの上に重ねて、PCに視線を戻した。

 

 

 お昼休み。普段はあまり行かないエスニックなレストランに山下課長とともに昼食を取っていた。

 

「真鍋さん、お昼一緒にどう?」

 

いつも無表情な山下課長から、お昼の誘いがくるとは意外だった。今まで、一度も起きなかったイベントだ。何か私に言いたいことでもあるのだろうか。警戒はあったが、誰でもいいから話をしたい気持ちが勝った。

 

「わかりました」

 

それで選ばれたお店が、このエスニックなレストランだった。香辛料の匂いが立ち込めている。普段行っているファミレスとは違った雰囲気でプラスチック製の赤いお皿に、香辛料のかかったお肉が盛られている。口に入れると、凝縮された肉がほろほろと崩れ絶妙な食感と辛みの効いた香辛料が広がって、とても美味しかった。

 

「真鍋さんって、そんな顔するのね」

 

また意外な一言だった。というよりも、常に無表情な山下課長に言われるとは思わなかった。普段私も感情の振れ幅は大きいわけではないが、部下にはなるべくキツイ顔にならないように意識しているつもりだ。