NOVEL

女の顔に化粧をするとvol.6 ~憂鬱~

同棲相手・雅と部下・島田との光景が目に焼き付いて離れない加奈恵。

加奈恵と雅の関係はいったい…!?

 


前回▶女の顔に化粧をするとvol.5 ~嫉妬~

はじめから読む▶女の顔に化粧をするとvol.1 ~思いがけない知らせ~

 

真鍋加奈恵

インターホンが鳴った。私はソファから身体を起こす気が全く起きなかった。酒が入っていたこともある。身体は火照り、気だるさが全身を覆う。

 

暫くすると、カギを開ける音がした。ドアの上下に二つのカギがあるため、いつも雅はカギを迷っている。しばらくもたついた後、ドアの開く音がした。コンビニの袋がこすれる音がする。何か買ってきたのだろう。冷蔵庫を開ける音がして、何か漁っている音がする。しばらくして、リビングの扉が開いた。

 

「…おかえり」

 

「ん?ただいま」

 

私は雅のほうも見ずにソファに横たわっている。

 

雅は私の様子を見ながら、机とソファの間に身体を滑り込ませてテレビを見始めた。

片手にはチューハイを持っている。5%のアルコール度数の低い酒だ。しかし、その酒をすこし口にしただけではないのがすぐにわかるくらいに、雅からは酒の匂いがしていた。

 

「今日、遅かったね」

 

「ん、そうか?いつもよりも早いと思うけどなぁ」

 

雅からの返事は生返事だった。私への返答よりも、全く関係のないテレビの先で喋る芸人のやり取りのほうが、彼にとっては重要なようだ。つまみのサキイカを口に含み、ときどき酒を口に運んでいる。

 

「ねぇ、私たちさ。何もないよね」

「そうだね」

「お互い仕事終わったら缶のお酒買ってきて、テレビを見て。たまの土日も適当に時間潰して、時々セックスして」

 

雅には私の声は聞こえているのだろうか。それとも、無視しているのだろうか。