NOVEL

女の顔に化粧をするとvol.6 ~憂鬱~

今日くらいは休んでしまっても良いのではないだろうか。そんな思いが頭をよぎる。

実際、仕事にならないくらいならば、休んだ方が良いと思っている。しかし、今日仕事を休むことで島田がどんな顔をするのかを想像したら、そのままベッドに横たわっているのも、いら立ちが重なるだけだった。

 

一旦ベッドから起き上がって、洗面台に向かう。顔を洗って歯を磨く。

なんとも酷い顔が、鏡に写っていた。パンを焼き、卵とウインナーをフライパンに乗せる。卵が焼け、白身のたんぱく質が、不可逆に白く変性していくのを見つめていた。

 

朝食を済ませたのちに、髪と化粧を整えて鞄を取ろうとしたその時、目の前が揺れて気が遠のくのを感じた。よろけてソファに座り込んだ。

 

「無理だ…」

 

いくら会社に行こうとしても、身体が完全に拒否をする。全く思い通りに動かない。鞄を持つ手に力が入らない。

会社に行かなければ、そう思うほど、この1週間に起きた出来事がフラッシュバックする。

何でこんな思いをしてまで生きなければいけないのか、私が何をしたというのか。様々な疑問が浮かぶ。まだ寝室で眠っているものに対しての嫌悪感や虚無感が一気に私を襲ってきた。

 

「だめだ…。何か、もう駄目だ…」

 

パンクしそうになる頭を押さえる。目にはキッチンが映る。

そこには、今を終わらせることが出来るものもある。ゆっくりとキッチンへと進む。戸棚を開けると、目の前には洗ったばかりのそれがあった。

 

ゆっくりと手を伸ばし、手が柄に触れる。白く光る刃を暫く見つめて、ゆっくりと目を閉じた。

 

 

Next421日更新予定

珍しく山下課長に誘われて一緒に昼食を取ることになった真鍋加奈恵。その時、山下から思いもよらない忠告を受けることになる。