NOVEL

年収一億超えの妻たちvol.5~不信感~

「お帰りなさい」と夫と口づけを交わす妻。

良好のように見えた関係の中で生じた疑念とは?

 


前回▶年収一億超えの妻たち vol.4~ママ友~

はじめから読む▶年収一億超えの妻たち vol.1~結婚記念日なのに~

 

 

熱烈な口づけ交わし、舌を絡ませ合う私と夫。

何故かは分からないが今日は情熱的に、私の舌を求めてくる。何が変わったのかは正直、分からない。でも何かが変わった気がしてならなかった。

 

そんな熱い口づけと抱擁を終え、私たちは食卓に着く。

 

そして、席に着くなり私たちは家政婦の早苗さんが作ってくれた食事に舌鼓を打つ。

前から思っていた事だけど、彼女の料理の腕は群を抜いている。

今日の料理はエスニック料理であり、熱烈な口づけの後には相応しい刺激的なものだ。

 

こうして食事を終え、入浴を済ませたのち寝室へと向かう。

 

「今日は情熱的なのね?」

「何を言うかと思えば…。私は何時も情熱的だぞ?」

 

その後、些細な言葉を交わしながら、ベッドの上で再び熱烈な口づけを交わす。

 

息子である聡也のことは早苗さんが見てくれており、他の部屋にいる。

また寝室は完全な防音状態となっているため、いくら高い声を上げた所で聞こえることもない。

 

そんなプライバシーが守られた環境。

それらを差し引いてもなお、今日の彼はあまりにも情熱的で…。

奇妙なくらい積極的だった。

 

朝の素っ気なさは、いったいなんだったのだろうか…?

そんな思いすら感じさせられる。

 

ただ、そんな違和感や疑念も情熱的な行為の中で、燃え尽きかけた蝋燭の炎のように徐々に徐々にと消えていく…。

熱い抱擁で重なる体。

そこから生じる熱気と愛おしさが高まるにつれ、私の中の違和感や疑念という老廃物は燃え尽きていく。

 

こうして心の中の不純物を燃焼し、塵へと変えながら彼の背中に両手を絡ませる。

ただの肉欲に溺れているだけだと言われたならば正直、それを否定できる言葉はない。

でも私にとっては、この瞬間だけが彼の愛情を感じられる魅惑的な時間だった。

例え、それが本当の愛情とは程遠い物だったとしても…。

彼の体と心の熱を感じられるこの瞬間だけは私にとって唯一にしてかけがえのないもの…。