NOVEL

Insomnia Memories vol.5~眠れない夜、仕事部屋へ呼ばれた彼女。寝室で彼にそっと添い寝するが、衝撃の姿に彼女はただ涙する。そしてこの物語の全ての秘密が明らかになってゆく…~

そして出版された詩集が『四角の窓から見える風景』だった。

何気なく窓から、病室から見えた四季折々と感情の詩集は「余命いくばくもない心臓病の青年」が書いたと全面に宣伝され、世間では評判となり重版もされたらしい。

詩人が評価される賞にも選ばれたらしく、ぼくの代わりに母が式に参加した。

スピーチ用に書いた文字は、真っ白な病室の机で書いた。それを涙しながら母が代読する。

パーティ会場ではその姿に焚かれるフラッシュ、インタビューの嵐。

でも、そんな世間の様子を俺は四角い窓の外の風景としてボンヤリと見つめていた。

素顔を明かさない謎の詩人として。まるで山茶花アユムは自分とは別の人間のようで。

それから数ヶ月、ブームが少し過ぎ去った夜。その日は酷い雨で雷の音が地震のように病院の弱々しい照明を揺らして。

いつもは姿を見せない心臓外科医の教授が落ち着いた表情で眠っていた僕の病室の扉をノックした。後ろには真剣な表情の医師や看護師がついている。

 

「起こして申し訳ない、浜名くん。心臓のドナーが見つかった。移植手術をしたい」

遠くで大きく雷が落ちて、閃光が窓から漏れ医師の顔を光らせた。

「今すぐ」

 

 

Next:11月18日更新予定

Insomnia Memories vol.6~最愛の家族と突然の別れ、受け継いだ新しい命。その時、彼女は?そして彼は…?~ | リアル名古屋 (real-nagoya.com)

最愛の家族と突然の別れ、受け継いだ新しい命。その時、蘭は?そして時生は…?~