NOVEL

選ばれない女 vol.10~一生の願い~

―なんでわたしを振ろうと思うの?!

―わたしを選ばないなんてどうかしてる。

 

なぜ…なぜ?という疑問と不満が頭の中をぐるぐるしていた。

 

「和食が作れるのは、ポイント高いでしょうから、どんどんアピールしていったらいいと思いますよ」

清水がなにやら助言をするが愛沙はうるさい、と思っていた。

 

―わたしはあなたが良いのに…どうして選んでくれないの。

発狂しそうな気持ちを何とか抑え、歩みを進める。

 

「こんなに美人とデートできて僕はラッキーでした。愛沙さんならすぐ結婚相手が見つかりますよ」

―本当にそう思うなら結婚してくれたらいいのに。

 

このままでは爆発しそうになるからと、車で送るという清水の誘いを断り、タクシーを拾うことにした。

 

「それじゃあ、ありがとうございました」

素っ気なく言う愛沙に、清水は心配そうに手を振る。

「はい。お元気で」

 

パテントレザーのパンプスがもつれる。

ヒールはそんなに高くないはずなのに、歩きにくい。

 

―そろそろ、本当に結婚決めなきゃな…。

 

暗くなり始めた道に、愛沙のヒールが寂しく鳴っていた。