NOVEL

選ばれない女 vol.9~高飛車な観点~

清水となら結婚してもいいのではないか、そう思えた。

 

 

「愛沙雰囲気変わったよね。」

夕飯の支度をしていた愛沙は、隣でお米をとぐ母から言われ、ぎくりとした。

「そう?」

「うん。もしかして、好きな人でもできた?」

 

いつだって、母親というものは勘が鋭いものだ。

 

―お母さんには婚活のこと内緒にしてるのに…。

 

愛沙は観念したように認める。

 

「うーん、好きというか。今婚活してるんだよね。そこでいいなって思う人がいる」

「なんか最近違うと思った!相手はどんな人?」

「フランス料理のオーナーシェフしてる人」

「まあ!いいじゃない!料理男子ね!今度うちに連れておいで」

 

愛沙はうーん、と唸った。

 

「そのうちね」

 

まだ結婚すると決まったわけではない。

愛沙はできれば清水と結婚したいと思っていたが、まだ決心ができているわけではなかった。

 

「お相手が料理されてるんなら、愛沙も手伝えるわね。和食のことならむかしっから叩き込んであるから!」

「いや、わたし、結婚したら仕事しないよ」

「え。そうなの?」

「そりゃそうじゃん。そのために婚活してるのに。結婚したらのんびり過ごしたいよ。子供もとくに欲しいと思ってないし」

 

子育てには追われたくない。

 

「…それは彼に言ったの?大事なことだから、ちゃんと折り合いつけないとね」

「わたしは折れるつもりはないよ。それを許してくれる人とじゃないと結婚しないし」

 

わたしと結婚できるというだけで、相手の男性はありがたいというものではないか。

美人でスタイルも良くて、和食はお店並に作れる。

ワインだって詳しいから食事もより良いものになるだろうし、夜の方だって経験も豊富にあるから楽しませられるハズだ。

こんなに良い女はなかなかいないだろう。