NOVEL

御前崎薫は… vol.2~変質者じゃない~

(……まぁ、確かにそれは怖い……か?)

その場で、いざというときのためにスマホをしっかり準備して、こちらに安全性を証明させた彼女は、機転が回るのかもしれない。それとも、前に似たようななにかがあったのだろうか。そうでなければ、すかさず名刺の真偽を確認するなど、なかなかできないだろう。

ホールで一人、ポストへ向かった彼女は――僕と同じように、「助かった」と感じていたのだろうか。

 

「……ま。もう終わったことだし」

呟き、さっぱりと風呂から上がる。

過ぎたことを考えたって、非生産的だ。さっさと頭を切り替えて部屋着に着替え、ノートパソコンを開いて、戦利品の牛丼を口にする。

「ん。なかなか美味いな」

コンビニの牛丼なんて、と思っていたけれど、食わず嫌いだったな。そう思いながら、メールをチェックする。一日の間にたまっていたメールを捌きながら、もう一口牛丼を口に運んだ。

 

無音の部屋に、またカタンと小さく隣の部屋の物音が届いた。

大丈夫。もう、関係ない。これまでだって関わって来なかったんだから、これからだって。自分に言い聞かせながら、また一つメールを開く。

そう――このときまでは、思っていた。

 

 

Next617日更新予定

自宅マンションのとなり部屋に住む女性・槙とコンビニで出会ってから調子が上がらない御前崎薫は、またしても同じコンビニで彼女と鉢合わせしてしまう。