NOVEL

noblesse oblige vol.3~閃光の行方~

ガラガラ

ピッシャーン

ゴロゴロ・・

宵から降り始めた雨は雷雨になった。

時計の針は2時を回ったところ。ようやく激しい雷鳴が遠ざかりつつある。

 


前回▶noblesse oblige vol.2夜の過ごし方~

はじめから読む▶noblesse oblige vol.1いつもの夕暮れに~

 

シーン2 瑞穂の場合

 

少し開けた窓から遠ざかる雷鳴が聞こえる。

レースのカーテンが風でふわりと揺れる。

かすかに潮の気配を感じて瑞穂は肢体を起こす。

 

微かな雷光が、柔らかな曲線を描き出した。

カーテン越しに香る雨の匂い。

少し、風に当ろうとベッドから抜け出す。

 

高層フロアはバルコニーが広い。

半分程、開閉式のルーフが覆っていて雨は届かない。

 

遠くの空で稲光が走る。

子どもの頃からカミナリは怖くない。

寧ろ好んで見ていた。

 

「・・龍みたい・・」

遠くを見つめながら、呟く。

降りて来る龍。

もたらすのは災いか、幸運か。

 

こんな夜は、開放的な気分になる。

全てを壊したら新しい世界が拓けるかもしれない。

それは空想の域を出ない。

実際のところそんな覚悟も希望もないことも知っている。

 

(ホントウ、ツマラナイ)

指先で大きな窓を弾く。

コツン、と音がした。

 

「・・瑞穂さん?」

傍らに眠っていた瑞穂が居ないことに気づいて透が目を覚ました。

「起こしちゃった?」

「・・ん、いま何時?」

2時過ぎたところ」

「・・来て」

 

透が上掛けをめくって、瑞穂に戻るよう促した。

瑞穂は素直に、もどってシーツの間に滑り込む。

少し冷めた肌に温もりが心地よい。