ガラガラ
ピッシャーン
ゴロゴロ・・
宵から降り始めた雨は雷雨になった。
時計の針は2時を回ったところ。ようやく激しい雷鳴が遠ざかりつつある。
前回▶noblesse oblige vol.2~夜の過ごし方~
はじめから読む▶noblesse oblige vol.1~いつもの夕暮れに~
シーン2 瑞穂の場合
少し開けた窓から遠ざかる雷鳴が聞こえる。
レースのカーテンが風でふわりと揺れる。
かすかに潮の気配を感じて瑞穂は肢体を起こす。
微かな雷光が、柔らかな曲線を描き出した。
カーテン越しに香る雨の匂い。
少し、風に当ろうとベッドから抜け出す。
高層フロアはバルコニーが広い。
半分程、開閉式のルーフが覆っていて雨は届かない。
遠くの空で稲光が走る。
子どもの頃からカミナリは怖くない。
寧ろ好んで見ていた。
![](http://real-nagoya.com/wp-content/uploads/86cfbfcf9153ec105708b75abb8763e2-1.jpg)
![](http://real-nagoya.com/wp-content/uploads/86cfbfcf9153ec105708b75abb8763e2-1.jpg)
「・・龍みたい・・」
遠くを見つめながら、呟く。
降りて来る龍。
もたらすのは災いか、幸運か。
こんな夜は、開放的な気分になる。
全てを壊したら新しい世界が拓けるかもしれない。
それは空想の域を出ない。
実際のところそんな覚悟も希望もないことも知っている。
(ホントウ、ツマラナイ)
指先で大きな窓を弾く。
コツン、と音がした。
「・・瑞穂さん?」
傍らに眠っていた瑞穂が居ないことに気づいて透が目を覚ました。
「起こしちゃった?」
「・・ん、いま何時?」
「2時過ぎたところ」
「・・来て」
透が上掛けをめくって、瑞穂に戻るよう促した。
瑞穂は素直に、もどってシーツの間に滑り込む。
少し冷めた肌に温もりが心地よい。