NOVEL

noblesse oblige vol.7~不愉快なパーティー~

(関西と聞けば大阪弁を話すものと思われているのかしら)

 

「東京とこちらが長いですから」

「へえ、東京にも行かれていたの」

 

周囲の視線が集まってくる。

互いの会話を保ちながら、意識だけ向けている様子。

こんな時は空気の流れが変わる。

まるで電流が流れたような気配。

沙耶香は昔から感じ取るのが上手い。

 

人の悪意も好意もすべて肌で感じることができる。

だから悪意と好奇に満ちた場所は居心地が悪い。

 

(・・本当、何なのかしら)

彼らの意図を図りかねていると美佐恵と目が合った。

含みのある視線。

あぁ、これを知っている。

学生のころから抜きん出るところの多かった沙耶香には覚えがあった。

“出る杭は打たれる”

時と場所が変わろうと、それは変わらない。

 

嫉妬というより連帯感と優越感。

 

それは女性特有のものではない。男性も同様だ。

女性ほど明からさまではないが、その分根が深い。

本当に怖いのは男性の悪意かも知れない。

 

(くだらない人たち)

 

置かれた状況を理解して沙耶香は軽く頭痛を感じた。

さすがに32歳にもなってこんな目に合うとは思わなかった。

それなりに上手く対処できるようになったはずなのに。

 

やっぱりあの夜がいけなかったのだ。

嵐の夜は判断が鈍る。

瞼を落としながらもう一度深い溜め息を胸に落とした。