NOVEL

noblesse oblige vol.7~不愉快なパーティー~

美佐恵は自分より2歳年上の同僚だった。

沙耶香が東京支社から名古屋の本社に移動になったとき。

美佐恵も同じ部署に配属された。

他の会社に居たらしいが親の縁故で中途採用されたらしかった。

 

「大学はどちらなの?」

もう一度、シフォンの女性が訊ねてくる。

胸元に着いた同じシフォン素材の花が風に揺れる。

「神戸の女子大です」

「そうなの。お父様は何をなさっているのかしら?」

 

質問は続く。

 

(何でこんな身辺調査みたいなこと・・)

答えるのも面倒で口を噤(つぐ)む。

 

「電機メーカーの部長さんよね?お父様」

ふいに美佐恵が声をあげる。

「お母様はお花の先生だったかしら。お兄様は学校の先生」

家庭環境をすらすら話されてさすがの沙耶香も息を飲んだ。

 

(なんで・・話したことないのに)

 

「人事に知り合いがいるの」

そう言えば・・。

最近美佐恵が人事部の女子社員とよく一緒に居たことを思い出す。

自分のことを話しているとは思わなかったけれど。

 

不快感を隠しきれず、沙耶香は美佐恵に非難の目を向ける。

 

「だってほら、紹介してほしいって仰ったから。知っていないと、ね?」

美佐恵は悪びれず笑いながら答えた。

 

「へー、部長さん」

紹介された新城が合いの手を入れた。

「美佐恵と同じ部署だからどっかのお嬢様かと思ったけど」

前髪越しに見える瞳に意地の悪さが宿っている。