NOVEL

【錦の女】vol.7~トライアングル~

しょーこママにも子供はいた。

たまたま、店内の掃除を手伝っていた時にママが落としたショルダーバックから見えたカードケースに、小さな赤ちゃんを抱く若かりしママの写真を見つけてしまい、内緒ねと告げられながら教えてもらった事だった。

 

「息子がね、結婚するらしいの。この時から一度も会っていないのに、祝いたいなんて…烏滸がましいわよね」

 

それに対して、花を贈ったらどうか?と意見したのは玲子だった。

 

しかし息子は受け取る事さえ拒否したと後に知り、罪悪感が湧いた。

自分が余計な事を言わなければ、ママは傷つかずに済んだのかもしれない。

 

「私のこういうところがいけないんだよね…」

 

良かれと思うことが常に裏目に出て、旦那とも上手くいかなかった。

でも、子供たちだけは…離したくない。

 

 

自分だけを愛しているわけではない男の為に、愚痴を聞いて欲しくて吐くまで飲み歩くよりも、しなければいけない事があるのではないだろうか?

 

ノンちゃんに対して、そう思えてならなかった。

 

翌日もノンちゃんは【RedROSE】の開店と同時に一人で姿を現し、レイラが居るにもかかわらず、リナに席へ着くように言い放った。

 

「昨日は大丈夫でしたか?」

リナが声を掛けると、ノンちゃんはレイラにも聞こえるような大声で告げる。

「ノンがさぁ、一週間毎日店に来たら、リナっちの連絡先教えてよ!そういう約束はどう?

ボトルキープはしないから。毎回一緒に、なんか頼むから!」

 

一体なんの嫌がらせなのか?

 

リナには到底理解が出来ない。

 

しかし、レイラが澄ました顔でスマホの画面をタッチしている爪の音がカチカチと鳴るのが聞こえて、リナも悪い気はしなかった。

 

Next429日更新予定

1週間【RedROSE】に通い続け、リナと連絡先を交換することができたノンちゃん。だがリナは店外で会いたいというノンに対してためらいがあった。