NOVEL

踏み台の女 vol.8 ~次のチャンス~

誕生日の翌日に電話が繋がらないなんて。

なんとなく怪しい。アユミの女の勘はそう言っていた。

だがしかし、リサたち夫婦と神尾4人で食事にいくことに・・・!?

 


前回:踏み台の女 vol.7 ~不安な翌日~

 

リサから連絡が入ったのは、アユミの誕生日から2週間経った頃のことだった。

 

「急だけど、次の土曜って空いてる? 急遽2席空きが出ちゃって、よかったら彼と来ない?」

「え、次の土曜って明後日? いいの?」

「うん、一緒に行く予定だったご夫婦が急に体調崩されて入院したみたいなの。お店は久屋にあるあま木っていうお寿司屋さんだけど、キャンセル作りたくないから、アユミたちもしよかったらと思って」

「分かった、すぐ彼に連絡してみる。返事、明日になってもいいかな?」

「できれば今日中。ダメだったら他の人に声かけるから、早めにお願い」

 

リサと電話を切ったあと、アユミは急いで神尾に連絡した。時間は夜の21時を過ぎている。文章を打つのがもどかしく、しかし前回の教訓から、急に電話を掛けるのは躊躇われたので、

 

『今電話してもいい? 急なんだけど、明後日って空いてないかな? 久屋のあま木ってお寿司屋さんに誘われて』

 

とラインを送った。

既読になるだろうか、とアユミはしばし送った文面とにらめっこをする。

 

誕生日の翌日は、何度掛けても電話は繋がらず送ったラインも既読にならないのでヤキモキしたが、深夜になってようやく「ごめん! 実家に帰ってたんだけど、部屋に携帯忘れちゃって」と返信が返ってきた。しかし、アユミはそれをそのまま鵜呑みにして信じるほど、純粋で初心な女ではない。

神尾の言っていることは本当かもしれない。しかし、なんとなく怪しい。女の勘はそう言っていた。

 

だが、その後は何事もなく、いつも通りのやり取りが続いている。

会社のコーヒードリップの前で偶然一緒になった時など、

 

「またアユミちゃんとごはん行くためにもこの2週間は仕事を頑張るよ」などと周囲に聞こえない低い声でアユミに囁いてきた。

 

確かに神尾の抱えている案件は今が忙しい時期で、その宣言通り、神尾とは誕生日以来二人で会えていない。

土日の休みに誘いがあるかと待っていたが、結局何もないままだ。

あのキスは、本当に単なるプレゼントへの単なるお礼で、やはりお付き合い開始の合図なんかではなかった。もしお付き合いの合図であれば、間を空けずにデートの誘いがあるはず。