NOVEL

勝ち組妻 Vol.5 ~夫婦の閉ざされた悩み~

 

若菜夫妻の閉ざされた悩み 夫は外資系のエリート会社員なのに…?

 


 前回:勝ち組妻 Vol.4 ~タワーマンション住人の心の内側~

 

 

――平日のラウンジは人がいなくてよかったわ。

 

京子と若菜以外には、利用者はいない。

 個人的なことなので、周りには細心の注意を払わなければならない。

 

京子は視界のすみに、ラウンジの入り口をとらえる。

 だが、若菜は周りを気にする様子もなかった。

 

 

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お待たせしてすみません。

わたしが夫とどのようにして、結婚まで至ったか、でしたよね。

 

合コンがあって、しばらくは何の動きもなかったんです。

 参加したことも忘れかけていたころ、知らない名前からラインに連絡がありました。

 

それが、夫です。

 

最初はわたしの連絡先がどこか悪い人に漏れてしまったのかと、ひやひやしました。

 わたしのラインに追加されていない人ですからね。

 

『いきなりすみません。』

 

から始まったラインを見たときは、びっくりしたのと同時に、ドキドキしました。

 夫は、どうやらあれからわたしのことが気になっていたみたいです。

 

何かが、彼の心に引っかかったんでしょうね。

 いてもたってもいられず、友達から連絡先を教えてもらった、と聞きました。

 

そのときはもう…うれしかったです。

 長年恋人がいなかったわたしのことを、いいな、と思ってくれる人が、ふいに現れたわけですから。

 

それから、少しの友人期間を経て、2年くらいお付き合いしたのでしょうか。

 付き合っているときも毎日楽しかったです。

 大きな喧嘩もしなかったし、もちろん彼と別れるという選択肢もありませんでした。

 

――わたしの目に狂いはなかった。この人に一生ついていこう。

 

そう決意していました。

 

だから、プロポーズされたときはこれまでの人生で一番幸せな気持ちでしたよ。

 夏の暑いときに、東京まで旅行に行ったんです。

 彼はクルーズ船を貸し切って、プロポーズしてくれました。

 

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若菜がため息をつく。

 

「懐かしい。」

 

ふふふ、と声をあげて笑う。