LIFE STYLE

10年婚活 Vol.6~スピード婚約~

それからというもの、彼女と会っている時間は緊張してばかりだった。

遅刻、忘れ物は厳禁。会話も極力注意して彼女を怒らせないように気を付けた。食事も手羽先なんて手づかみで食べようものなら何を言われるのかわからない。まったく楽しくない。

おまけに彼女は私への感謝を全く示さなくなった。婚約当初は一緒にいるだけでも感謝してくれたのに、今では昼夜の料理を作ろうが、デート代をすべて出そうが「ありがとう」の言葉もない。

厳しい上司と一緒に仕事をしているようだった。もう「嫌い」のスイッチが入ったようで何をしても効果はなかっただろう。このまま結婚できるのかとても不安になった。

 

すでに久屋通駅近くのタワーマンションで同棲を計画しており、今のマンションを退去、引っ越し、そしてタワーマンションの契約と、数日後には入居を控えていたが、私は同棲をしばらく保留することにした。

彼女は怒り出すかと思ったのだがここは素直にOKしてくれた。直前の解約で大変だったがひとまず考える時間ができたことにほっとした。

 

 

彼女のことがわからない。変わったのは彼女では?ここまでスピードを出して婚約したことがいけなかったのか?

 

数週間後、彼女のほうから婚約破棄のお願いが来た。

私としては内心ほっとした。こちらから破棄を願って慰謝料請求など起これば大変なことになると思ったからだ。ひとまず円満に破棄できそうだ。しかしそれは二人の間だけのことで、私の両親、友人、職場にはとても説明できない。少なくとも時間をおこうと思ったが、やはり両親にはすぐにばれてしまった。

父はもともと彼女の印象がよくなかったようで、思ったより悲観していなかったが母はとにかく結婚してほしかったのか、落胆していた。まったく私の両親は私の幸せより「結婚」という肩書が欲しいようだ。

 

一か月後くらいにお祝いをくれた友人に説明をした。もちろんわかってくれたが辛い報告となった。

同時にあの緊張する2人の関係にはこりごりだし、その点については安堵した。

 

また戻った

 

また婚活にもどる。何か婚活がライフワークのようになってきた。毎週、女性に会って自己紹介して話をし、数回会って別れる、この繰り返しが日常になってきた。もしかしたらこの生活を一生続けていくのかもしれない。

 

一生婚活人生。

 

相談所にカウンセリングを受けているとき、隣ブース席の男性会員の声が聞こえたことがある。

 

「趣味が婚活になりそうです」

 

まさしく私の今がその状態だ。