NOVEL

年収一億超えの妻たち vol.9~逡巡~

結局、諦めて我慢するしか選択肢はないのだろう。

しかし、そう諦めかけた直後、早苗さんが突然、口を開いた。

 

「悩んでいても解決しませんよね……。でしたら思い切って、旦那様のことを調査してみてはいかがでしょうか?」

「・・・えっ?」

 

そんな意外な提案に私は一瞬、言葉を失う。

当然といえば当然だった。

何せ昨日、「旦那様は奥様を悲しませるような事は絶対に致しません」と自信満々に言っていたのだから。

でも何で急に・・・?

私は早苗さんの真意を計りかねて心底、困惑した。

 

そして、様々な思考が頭の中をグルグルと回るのを感じながらも、何とか思考を落ちつかせた。

 

(私、どうしたらいいの?)

 

しかし、そんな状態では上手くいくはずもなく…。

私は再び頭を悩ませる。

でも、そんな状態に陥っているのを見越してか、早苗さんがさりげなく言った。

 

「やっぱり、こういったことは悩むより行動です。それにハッキリした方が絶対に楽ですよね?」

「え、ええ、確かにそうよね…」

そう問われ、ひとまず彼女の意見に賛同する。

 

とはいえ、その提案はあまりにも・・・。

 

(大胆過ぎるんじゃないかな、早苗さん?)

 

それは早苗さんの意外な一面と言わざるを得なかった。

 

彼女に対する今までの定着したイメージは、気遣いができて思いやりがあり、頼れる女性。

そんな印象だったけど、今日からは大胆さも付け加える必要があるだろう。

 

でも…もしかしたら彼女のそんな提案は思いのほか、的を射たものかもしれない。

確かに大胆な発想ではあるけれども、それでもウジウジと悩み続けるより数倍マシだろう。

とはいえ、流石に即決することはできなかった。

何故なら、これを実行するとなれば、相応の勇気と決意が必要になるからである。

 

「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ、奥様。早々に身辺調査をして旦那様の身の潔白を証明してしまいましょう」

 

しかし、そんな思いを知ってか知らずか、早苗さんが私に向けて、そう促してくる。

 

(早苗さんの方が張り切っちゃってるわ。参ったな…どうしよう?)

 

渦巻く迷いと葛藤。

迅速に行動すべきか、それとも一旦、冷静になるべきか・・・。

私の心の中を色々な思いが駆け巡る。

 

そして、迷いに迷った末、漸くある決断をした・・・。