子宝に恵まれ、高級住宅街に住む女の切実な悩み。
「どうしたらいいの?」そんな迷いを胸に進む道。
(何だろう…この虚しさは?)
夫である翔平を送り出した後に訪れる虚しさ。
一人息子に恵まれ、夫は年収数億の大企業の代表取締役社長。
さらには名古屋でもセレブタウンと名高い地域に住居を構え、何不自由のない生活を送っている…。
周囲の人間はそんな私を見て、きっと羨ましがるのだろう。
幸せそうだな。
何の不満もない生活をしているのだろうな…と。
でも現実はそんな理想的かつ幸せに満ちたものではない。
誕生日はおろか、大切な結婚記念日まで軽視される始末だ。
多忙のため忘れているだけなのか、それとも眼中にすらないのか?
正直、分からない。
そもそも、そうなったのはいつからだったのか…。
少なくとも結婚当時は、そんなことはなかった。
何にしても、ただ耐えるだけの生活には限界がある。
だが、そんな生活でも僅かな救いはあった。
その救いとは愛しき我が子の温もりと夜の営みである。
そんなか細いものではあるが、ないよりはマシ。
僅かとはいえ、愛情の片鱗でも確かめる術が残されているのだから、まだいいのかも知れない。
そんな事を思いながら、ふとスマホの画面を見つめる。
(こんなこともあったのよね…)