NOVEL

引きこもり女の裏側 vol.7 ~あの頃の満たされた気持ち~

愛されている実感がほしい。

大切にされているのだと感じたい。

それを叶えてくれる人に幸恵は出会えるのだろうか・・・

 


前回:引きこもり女の裏側 vol.6 ~心にぽっかり空いた穴~

 

部屋は、シックな雰囲気だった。夕方の砂漠を模したような幻想的な壁紙に、白い天井。茶色の梁が部屋の隅から隅までのびている。

2人は余裕で座れるだろう革製のソファの前に、ヒノキの角張った机が堂々と置かれている。ベッドの両脇には白い明かりが優しく灯っていた。

 

「先にシャワー、浴びますか。」

 

幸枝が声をかけると、Aはソファに荷物を置き、スーツの上着を脱いで座った。

 

「そうですね。先に浴びてきてもらえますか。」

「わかりました。」

 

―わたしがお風呂に入っている間に寝ないかしら。

 

と不安になり、早めに体を洗うことにした。

お風呂から出ると、Aはやはり寝ていたのか、ぼーっとしていた。

 

「あ、出ました?僕も入ってきますね。」

「大丈夫ですか。お疲れでしたら、今日はやめておきます?」

「いえ、少し寝たら、元気になりました。入ってきますね。」

 

たしかに、若干声色が明るくなった気がする。Aを見送り、手持ち無沙汰の幸枝は、備え付けの紅茶を作っておくことにした。

 

ホテルに入って3時間後に退出した。

駐車場で解散する。

Aは満足したのか、最初よりも顔が穏やかになっていた。

 

結論として、幸枝はAでは物足りなかった。時間をかけて優しくしてくれたのはよかった。

だが、何か声をかけてくれるということもなく、淡々としている印象があり、なかなか気持ちが盛り上がらなかった。

 

公平は、最中にも抱きしめてくれたし、たくさんキスもしてくれた。「好き」という言葉もたくさんくれた。終わったら、愛おしそうに頭を撫でてくれた。

抱きしめ返すのでは足りないほど、公平が好きだという気持ちが溢れていた。

あの頃の満たされた気持ちを、もう一度味わいたい。

 

次に期待か。

 

愛されている実感がほしい。大切にされているのだと感じたい。

BCはそれを叶えてくれるだろうか。

 

虚しさと小さな希望を抱えて、幸枝は強くハンドルを握った。

 

 

火曜日はさすがにしんどかった。早めに仕事を終わらせ帰宅した。

体は重かったが、気持ちは沈んではいなかった。

 

―Bはどのように楽しませてくれるんだろう。

 

考えると、体がうずうずした。