愛されている実感がほしい。
大切にされているのだと感じたい。
それを叶えてくれる人に幸恵は出会えるのだろうか・・・
前回:引きこもり女の裏側 vol.6 ~心にぽっかり空いた穴~
部屋は、シックな雰囲気だった。夕方の砂漠を模したような幻想的な壁紙に、白い天井。茶色の梁が部屋の隅から隅までのびている。
2人は余裕で座れるだろう革製のソファの前に、ヒノキの角張った机が堂々と置かれている。ベッドの両脇には白い明かりが優しく灯っていた。
「先にシャワー、浴びますか。」
幸枝が声をかけると、Aはソファに荷物を置き、スーツの上着を脱いで座った。
「そうですね。先に浴びてきてもらえますか。」
「わかりました。」
―わたしがお風呂に入っている間に寝ないかしら。
と不安になり、早めに体を洗うことにした。
お風呂から出ると、Aはやはり寝ていたのか、ぼーっとしていた。
「あ、出ました?僕も入ってきますね。」
「大丈夫ですか。お疲れでしたら、今日はやめておきます?」
「いえ、少し寝たら、元気になりました。入ってきますね。」
たしかに、若干声色が明るくなった気がする。Aを見送り、手持ち無沙汰の幸枝は、備え付けの紅茶を作っておくことにした。
ホテルに入って3時間後に退出した。
駐車場で解散する。
Aは満足したのか、最初よりも顔が穏やかになっていた。
結論として、幸枝はAでは物足りなかった。時間をかけて優しくしてくれたのはよかった。
だが、何か声をかけてくれるということもなく、淡々としている印象があり、なかなか気持ちが盛り上がらなかった。
公平は、最中にも抱きしめてくれたし、たくさんキスもしてくれた。「好き」という言葉もたくさんくれた。終わったら、愛おしそうに頭を撫でてくれた。
抱きしめ返すのでは足りないほど、公平が好きだという気持ちが溢れていた。
あの頃の満たされた気持ちを、もう一度味わいたい。
―次に期待か。
愛されている実感がほしい。大切にされているのだと感じたい。
B、Cはそれを叶えてくれるだろうか。
虚しさと小さな希望を抱えて、幸枝は強くハンドルを握った。
火曜日はさすがにしんどかった。早めに仕事を終わらせ帰宅した。
体は重かったが、気持ちは沈んではいなかった。
―Bはどのように楽しませてくれるんだろう。
考えると、体がうずうずした。