NOVEL

引きこもり女の裏側 vol.7 ~あの頃の満たされた気持ち~

 

 

水曜日の夜は、仕事が立て込んでしまい、予定の時間に間に合いそうになかった。

 

〝すみません、遅くなります。″

 

Lineとは別のSNSの捨てIDを使い、Bに連絡を送る。

 

すぐに〝了解です。″と返信がくる。

 

〝良かったらどこかの駅まで迎えに行きますよ。″

 

とすかさず連絡がきた。

ホテルまで自力で行くには大変だと思っていた幸枝には、ありがたかった。だが、まだ会ったことのない人の車に乗るには、やはり抵抗があった。

 

〝ありがとうございます。でも、すぐ逝けそうなので大丈夫です。

 

指定のホテルへと、タクシーで向かう。

 

―うわー、変換ミスってるし。

 

最近はそればかり検索していたからか、予測変換が良い仕事をしてくれたようだ。Bがスルーしてくれたことが、逆に恥ずかしかった。

部屋番号は聞いていたので、到着してから一直線に向かった。

階段を上がった先の扉は開け放してある。

自動精算機のようなので、本来ならパートナーと一緒に入室するシステムなのだろう。

 

「お待たせしましたぁ~…。」

 

恐る恐る入っていくと、バスローブを着てベッドで寛ぐたくましい男性がいた。肌がほどよく焼けていて、いかにもスポーツマンらしかった。

 

「お!来たね~!」

 

パッと起き上がり、二カッと笑う歯がまぶしく光っている。

 

「あれ、可愛いじゃん!」

「どうも。初めまして。すみません、お待たせして。」

 

〝かわいい″と言われたことに、気分がよくなる。

 

「いいよ、いいよ。大変だったね。なにか飲む?っていっても、水しかないけど。」

 

冷蔵庫から水を取り出す。

 

「いえ、今はいいです。お風呂ちゃちゃっと入ってきますね。」

「うん。ごゆっくり~。」

 

パワフルな人だな、と思った。これは、期待できるかも知れない。