NOVEL

Second Woman vol.6~噛み合わない歯車~

「はい、フラットホワイト」

三村が横から俺の机に置いた。

「あぁ…ありがとう」

ちょっと不意を突かれたので間の抜けた返事になってしまった。

「どうしたの?ぼんやりしてるよ、最近」

いつも思うのだが三村は良く見ている。そしてその指摘は大体当たっている。

「ごめん、ぼーっとしてたわ」

「もう、大丈夫?資料作りも溜まっているんでしょ。コーヒーでも飲んでシャキッとしなよ」

言いながら他部署の同僚とランチに出かけて行った。

 

少し前から三村は距離を意識しているのがわかる。

きっと俺が一緒にいても上の空であることに気づいたのだろう。女の勘は侮れない。

もしかしたら加澄さんとのことを気づかれたのではないかと思ったこともある。

彼女がうちの部署に仕事に来た時は無意識に目で追ってしまい隣から視線を感じたし、俺がスマホをデスクに置きっぱなしにしている時に加澄さんからメッセージが来たこともある。三村の位置からホーム画面が間違いなく見えただろう。

何よりも、加澄さんが俺のデスクに来てコーヒーを差し入れてくれたこともあった。

バレないか冷や冷やしたのだが、同僚なんだから普通にしていれば大丈夫よ、と彼女は言うだけだった。

資料…全然進まないな。

 

気分転換をしたくなり三村がくれたフラットホワイトを持ってテラスに出た。

その時、ちょうど人事部長が同期の部長と歩いてくるところだった。

人事部長は加澄さんと俺の関係を知らない筈だ。第一、数多くいる社員の中で俺のことなど認識していないだろう。

内心緊張しながらも、軽く会釈して通り過ぎようとしたところだった。

ふと幾何学模様のネクタイに既視感を覚える。

濃緑とグレーの組み合わせだが、色よりもデザインが目に留まる。

もしかして…。

それは俺がもらったネクタイの色違いだった。

 

 

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加澄と会えないことで不安が募り疑念を抱いてしまう純。そんな中、同僚・石田の口から加澄について一番考えたくもない言葉が洩れる。