NOVEL

Second Woman vol.6~噛み合わない歯車~

加澄と関係をもった純。三村に怪しまれながらも再び家に行く。後に悔やむことになるとは知らずに…。

 


前回:Second Woman vol.5~理性のものさし~

はじめから読む:Second Woman  vol.1~その後ろ姿にただ惹かれた、それだけの筈だった~

 

‘風邪は大丈夫?無理しないでね?’

まどろむベッドの中でメッセージを読む。

始業時間と同時に三村から来たものだ。メッセージの下には「お大事に」という動物のスタンプ。

 

 

「あら?誰かからのメッセージ?」

後ろから加澄さんが覗き込んだ。

 

俺は初めてズル休みというものをした。

風邪でもなんでもない。ただの仮病だ。

三村にもその旨をメールしたのだが、仮病だと怪しまれていないようだ。

昨日の飲み会のままこの部屋に来て一晩過ごし、あろうことか翌朝になっても離れたくなかった。

社会人としていけないのはわかっている。会社に行こうと準備する加澄さんを無理やり引き戻し、どうしてもまだ一緒に居たいと子どもじみた我儘を通した。

彼女は仮病を使うのではなく、「飲んでいた薬が切れちゃって」と電話で伝えているのが聞こえた。

業務が忙しいから午後から出勤するという。

せめてランチまでは一緒にいられるのだからまぁ良いか。

 

「それにしても随分強引ね」

あきれたように言うが口元は満足そうだ。

「加澄さんのせいですよ」

目を細めて俺は言う。

「忘れ物、なんて嘘をついたりして」

彼女のいう忘れ物は見事に嘘だった。ただ俺を呼ぶためだけだった。

「そうでも言わないとあなた来てくれるかわからないじゃない」

彼女がじっと見つめる。

「こうやって衝動的にさせるのは加澄さんのせいだ」

自分でもよくわからない。でも憑りつかれるような魅力を感じてしまう。

大体彼女は俺のことを好きなのか?

そんな言葉は聞いていない。

自分の中にある感情に気づかないふりをするように彼女を抱きしめた。

 

加澄さんと関係が始まってから3か月。季節は早くも12月に入ろうとしている。

仮病で休んだ翌日、三村から告白され断り切れず付き合うことになってしまった…が、

平日の夜に加澄さんの部屋に行くことも続いている。

このままではいつか周りにばれてしまう。いけないことだと思いながらも加澄さんを断ち切ることはできなかった。

それどころか沼にはまっていくように魅力に憑りつかれている。

加澄さんの出張で一週間会えない日が続いた時は禁断症状のようだった。週末に三村と過ごしていてもどこか上の空だっただろう。

いつも隣の席で仕事をし、毎週末会う三村。

たまにしか会えない加澄さん。

頻度が少ない方がより会いたくなってしまう。