NOVEL

Second Woman vol.5~理性のものさし~

バーで人事部長との過去を聞き、現在は付き合っていないことを知る。偶然の出来事から彼女の家に行くことになり…。

 


前回:Second Woman  vol.4~過去の共有~

はじめから読む:Second Woman  vol.1~その後ろ姿にただ惹かれた、それだけの筈だった~

 

 

「向こうに洗面所があるから着替えてきなさい」

そう渡されたのは男性もののジーンズだった。

 

 

まさか人事部長のではないよな?

その疑問がきっと表情から伝わったのだと思う。彼女は弁解した。

「それは兄のものよ。たまに出張でこっち来るからって勝手に置いていったの。だから気にせず着なさい」

これでは前回と逆だ。

どちらも偶然とはいえ着替える羽目になるとは。

 

兄のものだというジーンズはほぼぴったりで確かに人事部長のものではないとわかった。

部長は俺よりも少し背が低い。

戻ろうとするとリビングの電気が消えている。

うっすらと足元の間接照明だけ。あたたかい光がやけにムーディーだ。

彼女は先ほどまでの服を着替えてすっかり部屋着になっていた。

レースの上掛け、腕と同じようになめらかなのがわかる足元。つまり、かなり色っぽい。

「…辻本さん。やっぱり俺のことからかってますよね?」

「そう見えるならそれでもいいけど?」

なぜ挑発してくるのだろう。

「あと、呼ぶときは名字じゃなくて名前で」

「…加澄、さん」

完全に彼女の言いなりだ。

「俺、帰りますね」

どこか、第六感のようなところでこれはいけないと思った。うっすらと危険信号を感じているのがわかる。

「悪いけど加瀬くんの鞄はここにあるのよ。帰りたかったら取りにきて」

 

ソファに腰を下ろした加澄さんの横に俺の鞄は置かれていた。

何の罰ゲームだ、これは。

でも考えてみれば独身同士なのだから問題はないだろう。

なぜ悪い予感がするんだろうか。

鞄を手に取る瞬間に彼女の肌が目に入る。

すっと伸びた睫毛が目に入り、その頬、唇をやわらかいオレンジ色の照明が照らす。

これはいけない気がする。

でも…それ以上に理性を抑えることはできなかった。