NOVEL

男の裏側 vol.6~親友の助け~

居酒屋での一件以来、密の束縛はより厳しいものとなった。

環は出勤すると、まっすぐに家に帰ることを余儀なくされた。少しでも時間が遅れたら、どこに行っていたのかと問い詰められ、説教された。逆に早く出勤することも許されなかった。

 


前回:男の裏側 vol.5~飲み会での恐怖~

はじめから読む:男の裏側 vol.1~地獄の始まりは天国~

 

 

休日は必ず密同伴で行動しなければならなかった。スーパーに食材を買いに行くのも、デパートに日用品を買いに行くのも、一人で出かけることはほぼ許されない。

一人で出かけようとすると、必ず時間制限を設けられる。

 

ちょっとならいいか、そう思って寄り道すると、それが時間内にもかかわらず密に必ずバレてしまう。それも疑問に思う点だった。

何で分かってしまうのだろう…と段々薄気味悪くなってきた。

まるで、常に監視されているようだ。

 

環は段々と、夫の行き過ぎた束縛に憔悴(しょうすい)するようになった。

 

 ***

 

(……はあ……)

 

ふらふらと、外を歩きながら溜め息をつく。

 

(ろくに出かけることもできないし、それでいて家の中ではきちんと家事をしろの一点張り。厳しいと思えば、急にデレデレと優しくなったり。これじゃおかしくなっちゃうよ)

 

夫である密のことが分からなくなってしまった。環は何だかとても疲れ切ってしまって、家から離れたくなり、あてもなく近所を歩いた。

 

(公園にでも行こうかしら。外の空気を吸いたいし、ベンチでぼうっと風に当たるくらい、いいよね)

 

くるりと方向転換する。近くの公園に足取り重く入ると、不意に鞄の中のスマホが振動を伝えた。

 

『今どこにいるの?』

見ると、密からだった。

 

 

(また?何だか最近、こういうことが多い気がする。そもそも飲み会の居酒屋にいたことだって、何で分かったんだろうと思うし……)

 

環は不気味さを感じるより、むしろ焦ってしまった。密に怒られるのが怖くて、言い訳をしてしまう。

『大丈夫よ。今日はもう家に帰ってるから』

慌ててスマホに入力して送信する。これで安心かと思いきや、返ってきたのは意外な返信だった。

『公園にいるんじゃないの?』

冷水を浴びせられたようにぞっとした。焦って周囲を思わず見回してしまう。まるで夫がすぐ側で見張っているように感じたのだ。

 

そして、その時になって環はようやく思い至った。

 

(……このペンダント……!!)