NOVEL

Second Woman vol.7~疑いが確信に変わるとき~

ふとすれ違った人事部長のネクタイ。以前純がもらったネクタイと同じ模様であり色違いであることに気づく。

会えない不安から疑念が生じてきたのだった。

 


前回:Second Woman vol.6~噛み合わない歯車~

はじめから読む:Second Woman  vol.1~その後ろ姿にただ惹かれた、それだけの筈だった~

 

人事部長も加澄さんからもらったものなのか?

有名なブランドだったから偶然だろうか。ぐるぐると想像が広がっていく。

気分転換どころかまた不安が増すばかりだ。

とりあえずコーヒーを一口飲む。フラットホワイトの苦さが心に刺さる感じがした。

 

 

「加瀬、今休憩か?」

後ろから石田に声をかけられた。通りすがりにこちらを見かけてテラスに出てきたらしい。

隣に座り、同じように手にしたコーヒーを飲む。

俺は何気なく会話する。

「石田も休憩?最近忙しそうだったよな」

加澄さんと一緒のプロジェクトはまだ続いている筈だ。

「やっとプロジェクトが終わりそうなんだよ。あーこれで忙しさからも解放されるわ。まぁ忙しいって言いつつ先週はチームで飲み会もやっていたんだけどね」

「飲み会?」

「ああ、プロジェクトが終わる見通しもついてきたし皆で最後まで頑張ろうっていう一致団結のためみたいな?ちょうど金曜日が辻本さんの誕生日だったらしくてさ。チームの若い子たちがお店にケーキ頼んだりして何だか盛り上がっていたな」

 

誕生日…。知らなかった。

そんなこと加澄さんは教えてくれなかった。

「まぁ肝心の辻本さんは一次会で帰っちゃったんだけどね。あの綺麗さだし誰か付き合っているんだろうなーって残ったメンバーで噂してな。人事部長も独身だし、よりを戻したのかもしれないなんてさ」

 

一番考えたくない想像が石田の口から洩れる。

もしかしたら加澄さんはまだ部長のことが好きなのではないか。

避けてきた自問だった。

金曜日が誕生日だったとしたらその週末は誰かといたのでは。

そしてそれは部長だったのでは。

悪い考えが広がっていく。先ほど見かけた部長のネクタイ。確かに同じ幾何学模様。

悶々とした気持ちは拭えない。今日仕事が終わったら彼女の部屋に行って直接話そう。

辛い答えを聞くことになったとしても今は彼女に会いたい。

 

「そういえばさ、ちょっと気になることがあってさ」

石田が外を眺めながら呟く。

「気になること?」

「ああ」

一瞬緊張してしまう。

「先に確認しておくけどさ、三村とうまくいってるか?」

「……」

言葉に詰まってしまった。

「いや、ちょっと噂を聞いたんだけどさ。お前、辻本さんと出かけてたって本当か?仕事帰りに街で見かけた奴がいるらしいぞ」