NOVEL

玉の輿vol.7 ~報復の章~

珠子の反撃が始まる!無垢な夢の終わりは、孤独との闘いの幕開け。

“妻”という肩書だけが珠子の依代…。女の見栄なのか?それとも意地なのか?

 


前回▶玉の輿vol.6 ~麻梨恵の章~

はじめから読む▶玉の輿 vol.1~珠子の章~

 

珠子が、西園寺家に幽閉されながら過ごした1か月。

精神的な疲労から、胃腸炎を患っていたが、公表されることは一切なかった。

専属の医師が通い、雄一郎と愛子が珠子の代わりに新婚旅行に行った一週間後には、珠子は体調を持ち直していたが、見舞いに一度だけ来た両親には叱咤された。

 

「西園寺家の嫁としての自覚を持つように!」

 

嫁に出した娘は、生頼珠子ではなく、西園寺家の者なのだ。

そのために、多額の借金を父は負った。

15年は住宅を含めたローン返済のために、血眼になって働くのだろう。

 

それでも、娘の夢を…叶えてやりたい。

そして世間様に顔向けできる一家になることが、重要なのだ。

 

少女が描いた夢は、一家を巻き込む大事であったことを改めて痛感させられた。

 

母は帰り際に一言だけ…。

「早く、孫の顔を見せてね。珠子も若くはないんだから…。楽しみにしているわ!」

 

その言葉が、珠子に突き刺さる。

 

『子供』つまり、西園寺家の御曹司を自分は産まなければならない。

 

『お玉さん』がそうであったように、自分が果たさなければならない使命がそこにある。

 

雄一郎達が日程通りに帰宅する前に、珠子は西園寺家に用意された自室を見て唖然とした。

 

大々的にお輿入れをする為に用意した、家具がないのだ!

それを執事の梶原に問うと、小さな一室、もはやそこは倉庫のような奥の個室に入れられていた。

 

「ご必要であれば、お使いください」

 

一般人が高級だと思うものと、西園寺家に相応しい物は違う。

安易にそれを示されても、珠子はもう傷つく心の隙さえも残っていなかった。

 

「解りました。これはこのままで構いません。私は今、外出を禁止されていますが、欲しい物は自分で揃えます」