チリリン♪
軽やかな鈴の音。
その場にいた全員が一斉に振り向いた。
ドアベルを片手に真っ白なドレス姿の女性が微笑んでいた。
前回:noblesse oblige vol. 7~不愉快なパーティー~
はじめから読む:noblesse oblige vol.1~いつもの夕暮れに~
「お邪魔だったかしら?」
凛とした軽やかな声が響く。
「瑞穂さま!」
真っ先に美佐恵が声をあげて駆け寄った。
「来てくださったのですか?」
「おい、あれ」
「あぁ、三条の」
女性陣は色めき立ち、男性陣は臆しているようだった。
(あら、あの人・・)
見覚えのある顔。誰だったかしら・・
記憶の扉を開けようとしたその瞬間。
美佐恵の傍をすり抜け沙耶香に近づいてきた瑞穂が沙耶香を抱きしめた。
「お久しぶりね」
柔らかな心地よい抱擁。
さっきまでの不穏な雰囲気は押し流され清浄な空気に包まれる。
「お久しぶり」
沙耶香も両腕を回して軽く抱きしめる。
瑞穂のことも、あの時の情景も鮮やかに思い出していた。
「・・お知り合いですか?」
近づいて来た美佐恵が訝しげに覗き込む。
さっきまでの見下した言い方ではなかった。
「ええ大切なお友だち」
瑞穂が答える。
「・・・お友だち?」
周囲がざわめく。
「・・おい、やばいんじゃない?」
そこにいた数名の男女が顔色を変えた。