NOVEL

noblesse oblige vol.8~必然の再会~

沙耶香が差し出した手をしっかり握り返す。

笑顔の透に他意は感じない。

(心の綺麗な素直な子)沙耶香は温かな気持ちに包まれていた。

 

「さ、行きましょう」

「車を回すから待っていて」

透が荷物をまとめて持ち上げる。

 

瑞穂と沙耶香はゆっくり正面玄関へ向かう。

 

「名古屋まで戻って良いかしら?」

瑞穂が尋ねる

「ええ。何も予定はないから大丈夫」

「良かったわ。お腹は空いていない?」

「まだ平気」

「そう、じゃあ戻ってから何かいただきましょう」

 

真っ白なベンツが目の前に停まる。

運転席から降りて来た透がまず後部座席のドアを開けた。

促されて沙耶香はシートに身体を沈める。

助手席のドアを開けて瑞穂を促した。

 

「ありがとう」

透に軽くキスして瑞穂が乗り込む。

助手席と後部座席のドアを閉め、運転席に戻る動作がスマートだ。

レディファーストが板についている。

それ以上に透の人柄を映し出していた。

 

居心地の良さに沙耶香は身を委ねた。

 

「安全運転でお願いね」瑞穂が透に囁く。

「任せておいて。沙耶香さんもね」

ミラー越しに右目でウィンクしながら透が答えた。

 

カーステレオから流れてくるのは「カノン」

高く低く、緩やかに旋律が結ばれていく。

帰りの旅は楽しいものになりそうだ。

 

窓の外には空の青と海の蒼。

曇りのない世界がどこまでも広がっていた。

 

Next:721日更新予定

パーティー会場を後にした瑞穂と沙耶香は名古屋に戻り食事を共にした。その後、沙耶香は瑞穂に連れられ、ある邸宅へと向かった。