NOVEL

noblesse oblige vol.7~不愉快なパーティー~

〜♪〜〜

弦の音色が潮騒に乗って跳ねる

涼やかな音色

女性ヴァイオリニストと男性のチェリストが旋律を奏で出した。

 


前回:noblesse oblige vol.6~偶然と必然~

はじめから読む:noblesse oblige vol.1いつもの夕暮れに~

 

 

パーティーの余興らしい。

 

沙耶香は窓を背にした二人に視線を向けた。

 

“Duo for Violin and Cello”

巧みな技巧が求められる曲。

BGMとしては多少、重いが嫌いではない。

 

美しい音色に聞き入っていると不意に肩に触れられた。

 

「・・・かしら?」

語尾だけ聞き取れた。

どうやら話しかけられていたらしい。

 

声の方へ身体を向ける。

先ほど美佐恵に話しかけた女性ともうひとり別の女性。

スパンコールをあしらった黒いワンピースを纏っている。

胸元にはブルガリのチョーカー。

 

気軽なランチと聞いてきたけれど・・。

(これが普通の感覚なのかしら)

沙耶香は胸の中で溜め息をつく。

 

「沙耶香さんはどちらのご出身なのかしら?」

 

紹介されていないから名前は分からない。

シフォンのワンピースを揺らしながら女性が繰り返す。

 

「神戸です」

「あら、関西の方なのね」

「お話しされるとわかるのかしら?それとも直された?」

関西圏だと告げるたびに、同じ質問をされてきた。