こんな気持ちは初めてだった。
だから…
『お願いだから…なんでもいいから…返信が欲しい。』
そんな気持ちのまま、スマホを握りしめてベッドに蹲る。
莉子が唯一自分らしく居られるスペース。
誰にも穢されたことのない、神聖なる寝所。
もし、相手が昭人なら…?招いても構わない。
そんな、乙女のような妄想をするようなタイプではなかったが、今はそれでも良いと思えた。
この胸を束縛される感覚が気持ちよいと…。
その時、スマホの振動が莉子の体中に響いた。
―これで、DMとかだったら…怒るよ…―
ゆっくりと、暗闇の中で光る画面を覗くと、昭人のLINEアカウント名。
『AKITO』の名前が表示されていた。思わず、「ひゃっ!!」と出したことのないような声を出してしまう。
もはや、自分らしさなんてどうでも良かった。恋に恋をしている自分を自覚できていれば、それでいい。
LINEを開いてみる。
『今日は有難うございました。こちらこそ、楽しかったです。莉子さんが空いている日を連絡くだされば、都合つけます。
僕も、もっとお話ししたいです。
今度はビジネス抜きに、ゆっくりと!』
昭人の微笑みを思い浮かべて、莉子は自分のネイルにキスをした。
36歳独身。
高層マンションの上層階に住む、ネイルアーティスト。
人生初の恋の扉を開けると同時に、悪女の仮面に蓋をしようと感じた瞬間だった。
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悪女が、ただの女になった瞬間!!今まで、簡単に超えたきたその一線への戸惑い。重ねた唇の先へ…莉子は変化を求めた。天然悪女は、落ちたのか?それとも、落とされたのか…?