少し崩した表情も綺麗だ。
「なんで、アナウンサー辞めたんですか?」
「んん…経済系を担当していたのですが…そっちの道に興味が湧いたっていうのかなぁ」
それなり。当たり障りのない返しの羅列。まだ、莉子は昭人のペースに合わせていくようにしか会話を展開させない。
小枝子が、少しだけ怪訝そうに「莉子ってそんな質問魔だった?」と、会話を遮断する。
「だって、起業セミナーでしょ?気になるもの。私だって個人事業主だし…」
あくまでも仕事関連での興味であるアピールをしつつ、視線は昭人の口元の変化を見逃さない。
ワイングラスに口をつけた後、薄い唇を舌で少し舐める仕草が目に入る。
うつむいているが、上目使いで莉子をロックオンしている。
そして、チラッと視線があうと、左の口元が上がる。
―きた!!!-
頭の回転が速い男は良い。まだ、顔を合わせて一時間位。会話は数回。
それでも、莉子はこの男をもっと知りたい、強いては欲しいと思った。
子宮が揺れるのを感じる。
これを、恋というのかもしれない。
漠然とだが、莉子は核心を導き出したのだった。
―有難う。小枝子…私が貰うよ。-
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恋はするものではなく、落ちるもの。今まで感じたことのない感覚に揺れる莉子。仕掛けたのは、莉子か昭人か?不透明なシーソーゲームが動き出す!