NOVEL

「Lady, Bloody Mary」~女の嫉妬~ vol.10

 

「えっ...辞表?」

 

海老原が少し驚いたように、目の前に佇むリノを見上げた。

 

「ええ、お世話になりました」

 

それだけ言うと、荷物を持ちさっとオフィスを後にした。

くすっと笑う社員達の嘲りも感じながら。CKNを一度も振り返ることもなく、リノは会社を後にしていた。

 

私が活躍できる場は、もっと高いところだ。

 

その後、三宮リノはFXで稼いだ金を元手に、ハイクラス向けの会員制クラブを経営する事にした。エステ、スパ、そしてバーをひとつにまとめ、40代以上の顧客をメインに開業したのだ。

年齢で、何もできないことなどないのだ。リノはCKNにいた時よりもずっと生き生きと自分らしく過ごしている。

 

「今日から殿村センセイ?ウケるね」

”トノムラこころのセラピークリニック”

「ま、名前よりもここっしょ」

 

グレーアッシュの先生らしくない医師はとんっと胸を拳で叩いた。

ここは東京、すぐ近くに新宿、歌舞伎町がある。ここは夜の世界で暮らす人々が心の苦しみを吐露しにくる癒しにしたい、と蒼は歌舞伎町にクリニックを作った理由を聖奈に告げた。

そして聖奈も時折、名古屋から恋人になった蒼に会いにやってくるらしい。マジこの仕事きちぃし人の闇って深いけど、やりがいあるわ、という蒼を支えようと将来は彼のそばで暮らそうかと思っている。

 

3者3様の「女王の座」

かつてひとつの座を狙い、血みどろの戦いが繰り広げられた。

今回、プロジェクトメンバーとハイスペ男子の心を手に入れたのは紗夜であったがリノ、聖奈もそれぞれの幸せを確かに掴み、形は違えども「座」に着いた。

 

そう、喧嘩は本気でしないと意味ないじゃない。

喧嘩で得られるものって、意外と普通じゃ手に入らないものなのよ。

 

そう3人の女性は、玉座に座りながら静かに笑った。

 

END…

 

 


「Lady, Bloody Mary」~女の嫉妬~ エピソード0

 

現実って意外と退屈、でも私が見た世界は意外と面白かったの。

透明な存在の「Joker」が遂に最後に語りだした。