NOVEL

彼女がいても関係ない vol.4 ~脆く危い関係の進展~

 

「あ、はい。たった今」

「そう、大変だろうけど頼みますね」

桐生が礼子に向かって微笑みかける。

 

トクン。

礼子の胸が高鳴った。

 

「何かあったらすぐ、言って。フォローするから」

「・・ありがとうございます」

桐生の言葉が礼子には特別なものに思えた。

顔をあげると桐生の眼差しが礼子を見つめている。

 

 

(そうよ、私だって捨てたものじゃないわ)

礼子は頭に浮かんだフレーズをもう一度、繰り返す。

(みてらっしゃい。私だって・・)

 

礼子は会議の資料を両手で持ち直し、桐生に告げる。

「早速で申し訳ありませんがお時間、取って頂けますか?ちょっとご相談したいことがありまして・・」

「もちろん良いよ。じゃあ、これから」

気安く請け負う桐生の言葉を制して、礼子が言う。

 

「あの、出来たら社外で聞いて頂けませんか?会社ではちょっと・・」

含みのある礼子の言葉に桐生は少し間を置いて答える。

 

「わかりました。じゃあ、明日の夜でどうでしょう?」

「はい、大丈夫です」

そう言って頭を下げた礼子の口元には笑みが浮かんでいた。

 

 

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 機嫌の悪い礼子は佐智子に無理な案件を押し付けて、自分は桐生とラウンジへ・・・? (私だって・・・)いつかのフレーズが心の中に木霊する。