NOVEL

踏み台の女 vol.5 ~女友だちとの夜~

誕生日デートが決まり気分がいいアユミ。

友人のリサに今日までのことを話すと・・・?

 


 前回:踏み台の女 vol.4 ~二人の約束~

 

翌週水曜日の夜、アユミは親友のリサと高岳のイルアオヤマにいた。

 

「急にごめんね~」

 シャネルのココクラッシュのゴールドリングを嵌めた手で、ごめんね、のポーズを作り、リサがアユミに謝った。

耳にも同じココクラッシュのピアス。

首元も同じシリーズのネックレスをしており、首元の詰まったブラックのワンピースに映えている。

シンプルだが存在感があり、嫌味がなく、ハンサムスタイルが似合うリサにぴったりだ。

 

「今日はシャネルの日?」

 アユミが聞くと、リサが「あ、これ?」と指元、耳元に手を当てた。

 

 

「一応平日だし、シンプルにしたほうがいいかなって」

「すごくよく似合ってるよ」

 アユミが忖度なしに褒めると、リサがにっこり笑って「ありがとう」と言った。

 

「仕事、忙しくなかった?」

 

時刻は18時少し前。アユミがイルアオヤマに来たのは初めてだ。

完全予約制のこの店は、今や超予約困難だと言われている。

だが、リサの夫が数カ月に1度の頻度で予約枠を取っているらしい。

本来ならリサたち夫婦で来る予定が、リサの夫に急用ができたため、ピンチヒッターとして呼ばれたのだ。

 

「全然。丁度繁忙期も終わったし、今日は落ち着いてたの。リサからお昼に連絡もらって、すぐ30分早退申請出しちゃった」

「わー、ありがとう。楽しみにしてたから、彼が行けなくなってすぐリサに連絡したけど、来てくれて本当によかった」

 

一人暮らしのアユミの月の食費を少し下回るくらいの金額の店。

だが、今日はリサの夫のご馳走らしい。

食事はフルコースで、飲み物もマリアージュでお願いしてくれているとリサがあらかじめ教えてくれていた。

アユミは出てくるものをただ純粋に堪能するだけでいい。

 

最初にシャンパンと前菜が運ばれてきた際に、リサと二人で写真を撮った。

それを、神尾に送信する。

 

『今日は30分仕事を早く上がらせてもらって、友達のご招待でイルアオヤマにきてます』