NOVEL

彼女がいても関係ない vol.4 ~脆く危い関係の進展~

礼子の機嫌の悪さの原因・・・

仕事の忙しさだけならまだしも、礼子を不愉快にさせる事柄は他にもあった。

そして礼子がとった驚くべき行動とは?

 


前回:彼女がいても関係ない vol.3 ~女子社員同士の脆く危い関係~

 

●絡み合う糸

 「このワイン、美味しいですね!」

栄の高層ビルにある3つ星レストランでグラスを片手に微笑む女性。

「でしょ?ボルドーより、ローヌが飲みやすいんだよ」

 

女性は三村佐智子。男性は、城島宏だった。

 

「城島さん、詳しいんですね。さすがですぅ」

酔いが回ったのか、佐智子の口調が少し砕け始めている。

「ま、年季だけは入っているからね」

満更でもない様子で城島が答える。

 

テーブルのキャンドルがギャルソンのサーブした些細な動きに揺れた。

ゆらゆら揺らぐ炎に照らされ、佐智子の首から肩のラインが浮かび上がる。

普段、制服を着ていると少しふくよかに見える身体が、女性らしい艶を醸し出している。

胸元の谷間がのぞくデザインのワンピースが佐智子の別の一面を引き出していた。

 

 

「でも城島さんから誘ってくださるなんて、嬉しいですぅ」

城島は慌てて視線を胸元から逸らして答える。

 

「いや!・・ほら、約束したからね」

以前、城島の書類を手伝ったお礼に食事でも誘ってくださいと言ったのは佐智子の方だ。

 

「でもよかったのかな?・・怒られたりしない?」

城島が訊ねたのは社内で噂になっている島坂のことだ。

 

「ん〜美味しい!・・え?何か言いましたぁ?」

デザートのチョコレートケーキを口に運びながら、佐智子が笑みを浮かべる。

 

「・・いや、何にも」

城島は佐智子の濡れた口元を見つめながら言葉を濁した。

 

佐智子が上司の島坂と付き合っているらしい、という話を城島は部内の噂で聞いていた。

直接の上司とトラブルになるつもりは、ない。が何気なく仕事の話をしていて食事を奢ることになったのだ。

プライベートでもなかなか来ることのない高級店でなぜ向き合っているのか、と問われると城島にも説明がつかない。

 

半年前から付き合い出したひとみとは結婚を視野に入れている。それなのに同じ課の百合子と関係をもったのは良くなかった。

もちろん本命はひとみの方だ。百合子は自己顕示欲が強く、結婚向きではない。

その点、ひとみは堅実で穏やかだ。恐らく理想的な家庭を築けるだろう、と城島は考えていた。

 

百合子とはすぐに関係を断ちたかったがなかなか上手くいかずにいる。

バレるはずはない、と思うが百合子の出方次第では分からない。