NOVEL

彼女がいても関係ない vol.10 ~本当の姿~

佐智子への憎しみからまさかの行動をとった礼子。

佐智子と礼子の運命は一体どうなったのか・・・。

そして、すべての真実が明らかに!?

 


前回:彼女がいても関係ない vol.9 ~佐智子への憎しみ~

 

●飛び散ったパール

パチパチパチ!

会場から拍手が湧き上がる。

 

壇上に居る桐生泰孝の代表取締役営業部長就任と婚約が発表されたのだ。

桐生の横に立つのは三村佐智子。

 

ではなく、真っ直ぐな黒髪が印象的な女性。桐生がアメリカに赴任している際に知り合ったらしい。

「美男美女でお似合いだ」

来賓客も口々に二人を褒めそやす。

 

「三村さんじゃなかったじゃない」

百合子がそっと乃亜に囁く。

「そうですね。ま、あくまで噂ですから」

悪びれることなく、乃亜がケロッとした表情で言ってのける。

 

「さすがジュニア。かなりの美人だね」

城島宏がワインを傾けながら目尻を下げる。

「あら、どう言う意味ですか?それ」

百合子に軽く睨まれ、城島が慌てた様子で打ち消した。

 

「いやいや、別に。君達も今日は一段と綺麗だね」

「またそんなこと言って。誤魔化されませんよ!」

百合子がひとみの方をちらっと見る。ひとみと城島がとっくに別れていることを百合子はまだ知らないのだろう。それより席に戻らない礼子のことが気にかかっていた。

 

・30分前

 

礼子の手に握られたナイフの先がまっすぐ佐智子に向かった。

「危ない!」

桐生が声を上げるのと同時に、佐智子が身体を躱す。

ナイフの刃先が左手首のブレスレットを切り裂いた次の瞬間、佐智子が礼子からナイフを奪い取っていた。

 

パラパラパラッ!

大粒のパールが宙を舞って赤い絨毯に散らばった。

 

「・・っ!」

次の瞬間、側にいたスタッフが礼子の身体を押さえ込んだ。

 

「大丈夫?」

桐生の傍にいた御室 珠莉が佐智子に声を掛ける。

 

「ええ、平気」

佐智子が答える。