NOVEL

彼女がいても関係ない vol.9 ~佐智子への憎しみ~

ついに創業記念パーティー当日。

そこで次期社長の桐生泰孝が婚約発表?しかもその相手が三村佐智子?

そんな噂を耳にした礼子がとった行動とは・・・

 


前回:彼女がいても関係ない vol.8 ~礼子の不満~

 

●宴のはじまり

「高崎様、お待ち申し上げておりました」

「いや、盛況だね。本日はおめでとうございます」

受付で恭しく頭を下げたのは営業事務の野中ひとみだ。

 

11月の第二土曜日午後1時過ぎ。

場所はマリオット・ホテルのタワーズホールルーム。エレクトロニクスの創業記念パーティーが2時から催されるため招待客が集まり始めていた。

全社員が招待客の応対とパーティーの進行管理に追われていた。

 

「山村様、お着きになりました」

来客の到着が告げられると担当の社員がすかさず接客にあたり、そのまま予め定められた席へと案内する。

300名ほどの来客がほぼ着席したとき、時報を告げるチャイムが鳴った。

 

♪♫♩〜

 

壇上脇のマイクにベージュのスーツを着た司会担当の女性が進みでる。

 

「みなさま、お忙しい中ご来場賜り、誠にありがとうございます。まずはじめに代表取締役社長 桐生省三よりご挨拶申し上げます」

 

フリーアナウンサーの田中香苗。

テレビ局を離れ、独立したばかりの人気アナウンサーだ。誰かのコネで呼ぶことが出来たという話だった。

紹介された桐生省三が壇上に上がり、マイクを握る。

 

「本日はお忙しい中、当社、創業50周年記念式典にご来駕賜りまして、誠にありがとうございます。ご列席下さいましたご来賓の方々のお陰をもちまして、当社はここまで成長することができましたこと、心より御礼を申し上げます」

 

代表取締役社長の言葉が終わると、創業記念パーティーの幕が上がる。

皆、注がれたシャンパンを片手にそれぞれのテーブルで談笑が始まった。

 

10人がけのテーブルが50卓ほど配置された会場は上座に来賓客と営業関係の社員が座り、出入り口側の席にはそれ以外の社員席が作られている。

今日は、制服ではなく私服でパーティーに参加するよう、全社員に通達されていた。女性社員はそれぞれにフォーマルドレスを纏い、日頃とは違う姿を披露している。

 

「いやぁ、いつも以上に華やかだね」

総務部長の石井が笑いながら隣の席にいた白石琴音に話しかけた。

 

「こんな機会は初めてなので、皆張り切っています」

濃紺のワンピースはジパンシーのものだ。ノースリーブで胸元が透ける素材になっている。派手すぎず上品な輝きを放っている大ぶりのネックレスが目を引くコーディネートだ。

琴音に限らず、誰もが1年前から今日の日に備えて準備してきた。