NOVEL

男の裏側 vol.6~親友の助け~

胸元に下げていた、美しいペンダントを掴む。そうだ。よく考えてみれば、密が環の行動を読むようになったのは、このペンダントをプレゼントしてきてからだ。この大ぶりなペンダントを。

 

「まさか……GPS?」

声に出して呟く。声色は震えていた。

GPSが仕込んであるのかもしれない。まさかそんなことを?いや、今の密ならやりかねないかもしれない……。

 

「いやっ!」

慌ててペンダントを外し、その場に投げ捨てる。

いや、でも、これがなくなれば怪しまれてしまう。それに、もし本当にこれにGPSが仕込まれてあるなら、捨てたら位置で把握されてしまう……。

 

「誰かたすけて……」

 

 

思わず、泣きながらその場にしゃがみこんだ。捨てたペンダントを引き寄せ、また握り締めた。どうすることもできない……。

 

そんな環の元に、遠くから聞き覚えのある声を掛けてくるものがいた。

「環!?」

 

それは、親友の樹里だった。

 

 ***

 

樹里は、わざわざ環の様子を見に、密と環の新居に来ようとしてくれていた途中だった。

友人たちと疎遠になっていたとはいえ、結婚を知らせる手紙は出していたから、その住所を見て来たのだろう。

反対されると思ったから、サプライズで来てくれたのだと……。今思えば、ありがたいことこの上なかった。樹里には感謝するほかない。

 

ぐすぐすと泣きじゃくるばかりの環を、樹里はずいぶんと辛抱強く慰めてくれた。公園のベンチに座って、整理されていないぐちゃぐちゃの状態のままをひたすら話した。樹里は血相を変えた。

「それ……。本当にやばいと思う」

いつもならあっけらかんとしている樹里のその一言が、事態の深刻さを表していた。

「ねえ、すぐ別れなよ!環、このままだと本当にまずいことになるよ!?第一、すでにモラハラじゃん!」

「モラハラ?」

環はびっくりして顔を上げた。

 

ご飯を作れ、掃除をしろ、それが出来ないのは環の性格や育ちのせいだ、そう言われ続けたことがモラハラにあたるとすら、環は気付いていなかったのだ。当事者になるとこんなにも鈍感になってしまうのかもしれない。

 

「そうだよ。どう考えてもその旦那さんはおかしいよ……。ね?私が前言った通り、その人とは別れた方がいいよ」

 

前言っていた通り。

前……。樹里は確かにそう言っていた。