あることをきっかけに中学生になった一人息子・春樹の夫・裕司に対する態度が変わっていく・・・?
春樹は、無事に第一志望の中学へと進学することが出来た。
加奈恵は春樹の努力を知っていたので、それはもう喜んでお祝いをしようと言った。
しかし、お祝い自体には反対しなかったものの、裕司は「それくらい合格して当然」というスタンスだった。それが、加奈恵と春樹に暗い影を落とした。
そして、春樹が三年生になって少し経った時のこと――。
***
「お母さん、日曜に友達を連れてきてもいいかな?」
最近すっかり背も伸びて、男の子らしさが増した春樹が、ある日そんなことを言ってきた。
春樹は友達が多い方だったので、加奈恵は二つ返事で了承した。
「あら、勿論いいわよ。でも、家になんて珍しいわね」
「うん。参考書を見せてたんだけど、折角だから沢山見たいって言うんだ。学校にはあんなに持っていけないから……」
来年高校生になるということもあって、そういう話題が上ることも多いのだろう。春樹は同年代の子よりも沢山参考書を持っていたから、部屋にあるそれを直接見せたいのだろうか、と加奈恵は思った。
「じゃあ、お茶菓子も用意しなくちゃね」
「ありがとう。……甘いものがいいかも」
***
日曜になって、加奈恵は驚いた。春樹が連れてきたのが、女の子だったからだ。
「桃木といいます、初めまして」
ボブカットの女の子は、とても清楚で可愛らしい印象を受けた。
緊張しているのか、玄関先でぺこりとお辞儀をする。
「あらあら、今日はゆっくりしていってね」
「ありがとうございます」
春樹はかなり照れくさそうにしていた。
それは、女の子の友達を連れてきたから、というだけではなく、桃木さんが相手だからのように見えた。
春樹と桃木さんは、二人で顔を見合わせて困ったように照れ笑いした。