「我慢はしてないの?」
京子が聞くと、里香は心底楽しそうに声を出して笑った。
「我慢?してないですよ。むしろ、楽しんでます。次はどんなボロを出してくれるのか。誰かが旦那を褒めるたびに、心の中で笑い飛ばしています。『あなたが思うほど、いい旦那ではないですよ。騙されていますよ』って。旦那の弱みを握ったと思っていますから、そこはいいんです。」
里香に強がっている様子はない。
「じゃあ、里香さんの悩みって…?」
「旦那が浮気してるってわかってから、わたしたちはレスなんです。わたしが旦那としたくなくて。そうはいっても、わたしにだって性欲はある。誰かに触れてもらいたい。」
里香は、すっかりぬるくなってしまった紅茶をぐっと飲み干す。
「浮気しちゃだめだってわかっているんです。旦那に原因があるんだし、離婚もできるでしょう。でも、それができないのはなぜでしょうか。」
明るくしているが、彼女は旦那さんの浮気に苦しんで、葛藤している。
それがひしひしと感じられ、京子はしんどかった。
何もできない自分に虚しさを感じる。
「あ!そうだ!京子さん、占いもできるんでしたよね。わたし、占い大好きで!わたしの未来占ってもらえませんか。」
里香がぱっと顔を輝かせる。
「もちろん、いいですよ。」
占いで未来を予測することはできるが、大事なのはアドバイス。
そして、今の里香に必要なのは寄り添う心。
彼女の心が晴れるように、と願いを込めて、京子はカードを切った。
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